「戦略論」から生物進化を考える授業、その可能性と課題 : 鳥の「飛ぶ」と、その理由に着目して
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
"進化"という言葉には挟む余地さえ与えない暗黙さを強要しているかのような、生物はそうこうしているうちに進化して、陸に上がり、空に進出し…と形式的に理解されていることが多い。ここには"問い"や"なぜ?"という視点が背景に退けられているのである。その"なぜ?"という問いに"進化した"や、"法則"で答えると、一見すると理解されているようだが、事柄と事柄とのつながりや、新たな課題はそこからは生まれにくい。科学教育においては、"科学する"といった「科学」を解き明かしていくために重要な、自分の仮説を構想してみることなどの科学的発想の自由さを伝えることをしないで、成果や結論・法則のみを教えるという傾向が強いように思われる。このような暗記主体の、知識主体の一方通行的な「教え」が今日問題になっている子どもの「理科離れ」の一つの要因になっているのではないかとも考えられる。我々は「理科離れ」というものを打開していく一つの方法としで考えるおもしろざを子どもに伝えることも重要ではないかと考えている。今回は、その自分の仮説を立てて、それを論議することを授業にもちこむ試みの一つとして、いまだ解明されていない最先端の「謎」を子どもにぶつけてみてはどうか、ということから、「鳥の飛翔の謎」に迫ることとした。この"考えるおもしろさ"を生物分野で子どもに伝えるために、そもそもの「進化」について言及されている「戦略(論)」という視点を科学教育にも転用することを背景としている。本論文ではこの「戦略論」がどのように科学教育、とりわけ生物(進化)教育に位置づけていくか、ということの一端を、具体的な教材プランと、その授業実践によってその可能性と課題とを探ったものである。
- 2003-11-30