転職前後の賃金変化と人的資本の損失
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概要
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本稿は,『雇用動向調査(入職者票)』を特別集計した資料を用いて,労働者の転職によって賃金はどのように変化するのか,またそれまでに蓄積してきた人的資本はどの程度失われるのかを計量的に把握することを目的としている。特に,同一産業内で移動した場合と産業間をまたがって移動した場合の転職前後の賃金変化を比較することにより,産業特殊的人的資本の損失がみられるかどうかについて分析している。分析の結果,転職者が産業間を移動する場合には産業内で移動する場合にくらべ賃金の低下は大きく,産業特殊的人的資本の損失がみられることが確認された。さらに,この産業特殊的人的資本の損失は,若年層よりも中高年齢層において大きく,勤続が長期化し前職産業において蓄積された人的資本の量が増えるほどその影響は大きい。また,ホワイトカラー労働者とブルーカラー労働者とでは,後者の産業特殊的人的資本の損失が大きいことも確認された。
- 1996-04-25