『人類の薄明』の文献的調査 : 独文
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概要
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1919年11月に発行された表現主義の詞華集『人類の薄明』には表現主義の詩人23名の合計272篇の詩が収められていたが、編纂方法や各々の詩の出典については、これまで殆ど考察されたことがなかった。本稿では、この詞華集に収められた詩がそれ以前にどの個人詩集や文芸誌で発表されていたかを調査し、それに基づいて、以下のような編纂上の特徴を明らかにしている。1)この詞華集で初めて世に紹介された詩は僅かに6篇であり、その他の詩は既にそれ以前に各詩人の個人詩集、文芸誌などで発表されていた。2)この詞華集に収められた詩人(詩)は、当時、とくに若い人々に必読の詩人(詩)として推薦されていたものが多かった。3)表現主義の「多様な表現・形式」を紹介しようとした編纂者の意図が反映され、特定の流派、文学集団、交友関係に限定されない幅広い選定が行われた。4)編纂の典拠となった詩集や文芸誌(年鑑)は、編纂者が企画顧問を務めていたエルンスト・ローヴォルト社、クルト・ヴォルフ社、ヴァイセ・ビュヒャー社から発行されたものがかなりの割合を占めていた。このような編纂上の傾向は、『人類の薄明』の文学史的意義を考える際に重要な判断材料にもなり得る。
- 2003-03-25