中小企業における企業間ネットワークの形成 : ダイナミック・ネットワーク論の一展開
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概要
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これまで,中小企業は,主として大企業との関係のなかで考察されてきたが,近年,中小企業間の対等的な企業間ネットワークの形成が進展している。しかし,こうしたネットワーク分析のための理論的フレームワークの検討と,ケースの収集はいまだ不十分である。本稿では,R. E. Miles and C. C. Snowのダイナミック・ネットワーク論を機軸として,こうした新しいタイプのネットワーク形成を検討する。彼らによれば,ダイナミック・ネットワークは,垂直的な分離性,ブローカー,市場メカニズム,情報の完全開示システムの四つを特質とする新しい組織形態である。本稿の内容は以下の二点に要約することができる。第一に,ダイナミック・ネットワークの概念自体の検討を行う。ここで,特に問題となるのは,彼らが主張するように,情報の完全開示システムが信頼構築の代替となるかどうか,である。われわれは,信頼,限定合理性,機会主義的行動などの概念の検討により,こうした主張が80年代における情報技術の発展に関する過度の期待の結果であり,理論的修正が必要であると考える。加えて,ダイナミック・ネットワーク論における,ブローカーの役割(設計,主導,世話人)の重要性等について検討する。第二に,中小企業16社に対するインタビュー調査を元に,ネットワークが直面している問題点をダイナミック・ネットワーク論の諸概念に基づいて検討する。その問題点は,ブローカーの機能不全,信頼の不在,構成要素の欠如等である。
- 2001-10-25
著者
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