探索型経営とオーディション・モデル (山口操教授退任記念号)
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概要
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山根[1999]および山根[2001]ではエンタテインメント・コンテンツ企業を題材にして,ハードウェアからわが国経済が重心を移しつつあるソフトウェアの経営と管理会計のあり方について論究した。それらの中でエンタテインメント・コンテンツ企業の経営をモデル化して示したが,このモデルは他の産業分野の企業においてもよく見られるようになってきている。わが国の産業がエンタテインメント産業化し,多くの消費財がエンタテインメント商品化している今日的状況の中で,一般の製造業や小売業も,エンタテインメント企業と同様の経営モデルが有効になってきていると考えられる。例えば好業績をあげている製造企業や小売企業には,エンタテインメント企業で特有の「オーディション・モデル」を取り入れている事例が見られる。またこれとは別に,過去10年近くアメリカ経済をリードしてきた米国シリコンバレーにおいても,ベンチャー・キャピタル・ファームにオーディション・モデルが見出される。日本企業は物資が溢れる豊かな社会の中で,従来とは異なった性格のヒット商品探索を行っている。シリコンバレーでは,情報技術やバイオ・テクノロジーの技術革新期の中で,新しいデファクト・スタンダードを獲得しうるベンチャー企業を探索しようとしている。オーディション・モデルは市場での広い「探索」に適する経営モデルであり,また今日の時代状況に適応するために日本企業に有効な経営モデルである,と考えられる。そしてそのことは,従来型の経営のあり方を見直す必要性を強く示唆している。
- 2001-08-25