増井幸雄の交通論 (藤井彌太郎教授退任記念号)
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概要
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1920年から1943年まで,慶應義塾大学経済学部で交通論を講じた増井幸雄の主著は,『交通経済総論』であったが,それは,交通機関の性質,発達と,その影響,交通機関の創設,営業(費用・交通量の増加確保の方法・賃率),国家の監督について論ずる。彼は,機械的動力を利用する交通機関の発達が,その国の交通の画期的改善をもたらし,国民経済の全分野を発展させたことに注目するが,その交通機関は,資本集中性,独占性,公共性,協同性,競争性などの特徴をもつ。彼は,このような交通機関の性質に鑑み,これをできるだけ「市場の理法」にしたがって,緒交通機関が共栄するような形で運営させることによって,交通市場の安定を実現することの利益を強調する。そして,交通機関による独占的地位の濫用は,市場自らの作用,あるいは国家の監督によって抑止されると説く。上述のような交通市場においては,交通機関の賃率は,いわゆる折衷主義,つまり,交通機関運営費用の大半である共通費部分に対応する価格を,需要者の認める運送価値を考慮して,その需要弾力性に反比例する形で賃率に織り込むという差別価格の方法によって定められることになるが,(費用逓減の傾向をもつ)交通機関の合理的経営の見地から,また,社会的公平の見地からも,このような価値設定の仕方が適切であるとする。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-08-25
著者
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