地方中核都市における公共交通対策 (藤井彌太郎教授退任記念号)
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概要
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中核市をはじめとする地方中核都市における交通状況には,公共交通分担率の低下と自家用車利用率の上昇という2つの傾向が見受けられる。この結果,利用者の減少により公共交通機関の維持が困難になると共に,中心市街地での渋滞問題の発生など,多くの課題が生じている。公共交通対策の必要性は,外部性など市場の失敗と交通弱者の足をいかに確保するという公平性の議論から導くことができるが,これらは公共交通対策を正当化する一因にすぎない。公共交通対策を正当化するためには,それぞれの選択肢について,導入に要する費用と得られる便益を比較することが重要である。公共交通対策は,代替案と比較して,導入に当たって取引費用が少額ですむ場合が多いと考えられる。地方中核都市の交通対策としては,従来は主に道路整備に力点が置かれていたが,近年は自家用車から公共交通機関に需要をシフトさせる様々な試みがなされている。鉄道では,各地でフリークエンシーの向上が図られている他,パーク・アンド・ライドも試みられている。また,乗合バスの活性化を目指して,パーク・アンド・バスライドやコミュニティーバスの導入なども各地で実施されており,これら政策を推進するための補助制度も設けられている。しかしながら,これら対策が成果を収めるためには,いくつもの前提条件を満たす必要がある。地方中核都市の場合,これら条件が満たされていない事例も多く,政策実施に当たっては,十分な事前調査を行うなど,慎重に対応することが必要である。
- 2000-08-25