公平性に適う地域交通政策の策定システム (藤井彌太郎教授退任記念号)
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概要
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一般に公共政策は非効率を生むものであり,それを正すための提案は数多くなされている。交通政策においても規制緩和政策や民営化などはその一例である。このように効率性は公共政策を評価する重要な基準であるが,それとともに公共政策は一般に公平であるとみなされなければならない。本論の対象である地域交通政策の公平性のあり方についても多くの議論がなされてきた。しかしながら,既往の研究は交通政策がもたらす結果が公平であるかどうかを問題としてきた。つまり,公平な交通政策とは公平な成果を生み出す交通政策なのである。この考え方は帰結主義と呼ばれる。本論では,帰結主義ではなく,非帰結主義(プロセス重視主義)に基づいて,地域交通政策を論じることを提案している。まず,非帰結主義的アプローチを地域交通政策の策定プロセスを対象として取り上げる政策上の意義および根拠を論じる。次に,経済学における帰結主義と非帰結主義の差違およびその含意について整理する。続いて,非帰結主義に基づいて地域交通政策の策定メカニズムを検討する要点を整理する。以上の準備を受けて,ひとつの公平な地域交通政策の策定システムを提案している。本論において提案した地域交通政策はひとつの雛型(理念型)に過ぎない。それゆえ,提案された政策策定システムがもっとも公平なものであるという保証は無い。また,地域住民あるいは当該地域がこの政策策定システムを望ましいものとして採用すると言う保証も無い。しかしながら,この問題に対する議論の出発点としてひとつの案を提示することには意義がある。もうひとつの本論の意義は,公平性の議論を政策論において,帰結主義的アプローチから非帰結主義的アプローチヘと転換することを提起していることである。このアプローチの転換は,政策策定システムに対する新しい分析視点を提示するものである。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-08-25
著者
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