電気通信産業における競争ルール整備を巡る議論 : 増分費用導入とユニバーサル・サービスを中心に (藤井彌太郎教授退任記念号)
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概要
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1990年代後半における米英規制当局の最大の政策課題は,最後に残された地域通信市場で競争を機能させることにあった。そのため,各国の規制当局は,第一に,競争ルールを確立し,同時に競争と整合する形でユニバーサル・サービス改革に取り組んできた。そして,競争ルールの中心は,競争上のボトルネック解放であり,既存地域電話会社ネットワークのオープン・アクセスとコスト・ベースの料金設定であった。それは公平な接続ルールの確立であり,より具体的に言えば,コスト推計における政策ツールとしての長期増分費用モデルの開発と導入であった。我が国において,現在,米英と比べ高い接続料を引き下げるため,どのような形で接続料金設定に増分費用を採用するかが議論されている。競争促進を第一と考えるグループは,早急に接続(卸)料金を引き下げ,競争を機能させることで,結果的に通信(小売)料金低廉化を実現すべきであると考えている。さらに,通信・インターネットを活用するネット・ビジネスが拡大することで,新たな雇用・投資・産業が立ち上がることを期待している。他方,増分費用導入に反対するグループは,NTTの経営とユーザー料金への影響を配慮し,接続料金引き下げや大幅な競争促進に慎重な姿勢を示している。必要な情報も開示されておらず,議論は深まっていない状況で,現在,改正事業法に関する国会審議が始まっている。本論文では,米英における増分費用導入とユニバーサル改革状況を概説し,さらに我が国における増分費用導入を巡る議論を整理する。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-08-25
著者
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