交通投資の効率的側面の検討 : 新道路整備五箇年計画を中心に (藤井彌太郎教授退任記念号)
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概要
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交通社会資本サービスヘの公平性の要求がある一方で,公共投資としての交通投資には効率性の追求が強く叫ばれている。効率性には各種の検討が必要とされるが,経済効果の計測論に焦点を絞り考察を行う。交通投資の経済効果を,基本的には需要創出効果と生産力拡大効果に分け,本質的効果である後者に関しては,投資による輸送コストの低下だけでなく,交通資本ストックの増加による効果をも加味しなければ過小評価になってしまうことを示す。また,近年の理論的研究成果,方法論をめぐる動向についてもその要点に触れる。その上で,道路整備五箇年計画を例に,具体的な計測手法,計測結果について論ずる。第7次道路整備五箇年計画以降今日まで各種の経済モデルによる実証分析が試みられているので,分析ツールとしての経済モデルの系譜を辿る。ハーバード・グループが開発したMETSモデルの批判的検討から始まり,大規模な地域計量経済モデル,操作性に留意したマクロ経済モデルが次々に構築されてきた。これらの長所,短所を概観し,最新の新道路整備五箇年計画(1998〜2002年度)で用いられた全国マクロモデル(FORMATION)の概略を,5つのブロックのうち需要ブロック,供給ブロックを中心に紹介する。政策シミュレーションについては,ケース設定,外生変数の扱いを述べ,10年間という限定された期間での結果を示す。これらを通して,基本フレームの中では新道路整備五箇年計画が便益/費用テストにパスしていることが確認される。実証分析の考察に基づき,費用対効果分析の問題点,今後への課題等が少なからず残されていることをまとめる。今日的要請に応える上でも,問題点の可能な限りの克服を前提に,効率性分析の必要性を改めて主張するものである。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-08-25
著者
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