笠井理論の学説論的意義 : 有価証券の時価評価と保有損益の論拠を巡って
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
今日の時価評価を巡る議論においてはさまざまな見解があるが,それらは必ずしも会計の全体系との係わりが議論されていなかったり(部分論),かりに議論されてもそこでの理論の一貫性に問題がないわけではない(全体整合性)。本稿で取り上げる笠井理論にあっては,今日の時価評価問題を笠井教授が構想する体系(企業資本等式モデル)のなかで,しかも首尾一貫した理論構成のもとで展開する。今日の時価評価を巡る議論は,煎じ詰めれば株式有価証券の(i)時価評価と(ii)保有損益をどう論拠づけるかにかかっている。この2つの問題を解くのに,笠井理論はその鍵を「アキュムレーション法」の考え方に求める。そこで笠井理論を(i)増価の論拠としてのアキュムレーション法. (ii)保有損益の論拠としてのアキュムレーション法として論じた。笠井理論の論点を要約すれば,(1)派遣分資産の資産カテゴリー規定(資産3分類説)と(2)派遣分資産の測定規約(狭義発生主義説)の2つであり,さらにはそれらの論点とも係わって,(3)全体の枠組みに開する統合の論理(発生主義会計説),および(4)保有損益の本質規定(保有損益説)の4つがあげられる。この4つの論点がそれぞれ笠井説の学説諭的意義にほかならない。強調されるべきことは,以上の論理一貫性を生み出している,その背後にある論理の組立てである。そして,その出発点になっているのが有価証券が帰属する資産カテゴリーの規定(笠井説の核心)であり,さらにはそれが「企業資本等式説」(山桝・笠井理論)といわれる会計構造論(勘定理論)を土台にしているということである。そのことが単に部分論にとどまらず,全体整合性を包摂した理論展開になっているということである。
- 慶應義塾大学の論文
- 1999-10-25
著者
関連論文
- 利益の「リサイクル」とは何か : 純利益とその他の包括利益の関係を中心にして
- 〈書評〉 磯山友幸 著 『国際会計基準戦争』 (日経BP社, 2002年10月) (佐合紘一教先生退任記念号)
- 時価会計と資本利益計算の変容(下) : 社会科学としての時価会計
- 割引現在価値と会計配分 : 資産化と利子配分
- 〈書評〉米山正樹著『減損会計 : 配分と評価』(森山書店, 2001年)
- 時価会計と資本利益計算の変容(上) : 社会科学としての時価会計
- 〈書評〉笠井昭次著『会計の倫理』 (税務経理協会,2000年) (高橋敏朗先生退任記念号)
- 金融商品の時価評価の論拠を巡って(下) : その学説論的吟味
- 金融商品の時価評価の論拠を巡って(中) : その学説論的吟味
- 笠井理論の学説論的意義 : 有価証券の時価評価と保有損益の論拠を巡って
- 金融商品の時価評価の論拠を巡って(上) : その学説論的吟味
- 原価主義会計とは何だったのか : 財務業績報告の多元化のなかで
- 資料 : 婁爾行と中国会計研究の歩み
- 時価会計と損益計算 : 包括利益を中心にして
- キャッシュ・フローの動態分析に関する覚書
- 企業会計システムの簿記論的基礎とその展開
- 損益計算とキャッシュ・フロー計算の動的統合モデル
- キャッシュ・フロー計算と複式仕訳 - 複式仕訳の相対化 -
- 原価・時価論争と資本循環シェーマ -異質な資本運動と会計評価問題-
- 論壇 金融商品会計の理論的基礎--再構成の可能性を求めて
- 論壇 減損会計と利益計算の構造
- 時価会計の経済的基礎--金融・証券経済の経済的基礎
- 「理論と実務の乖離」をめぐる論争--その方法論的吟味 (管理会計理論と実務の融合)
- 不確実性評価の基礎-下-リスク態度と不確実性のコスト
- 不確実性評価の基礎-上-リスク態度と不確実性のコスト
- 試算表等式論覚書--「2面的損益計算」説と「企業資本運動」説-2-
- 試算表等式論覚書--「2面的損益計算」説と「企業資本運動」説-1-
- 原価主義会計の構造と形態
- 不確実性・情報・決定の評価に関する覚書
- 不確実性の共有と分散--共同誘因とリスク配分
- 情報入手のタイミングと情報の動的価値(覚書)
- 情報価値の基礎考察
- 機会損失と不確実性のコスト-下-
- 機会損失と不確実性のコスト-上-