親会社概念の再構築 : 企業集団観の視点から
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概要
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連結基礎概念(親会社概念,比例連結概念,経済的単一体概念)は,連結範囲や資本連結等の連結会計処理方法を統一的に説明するために現在利用されている連結会計理論である。もともと,同じような状況下で見られる財務報告の多様性を排除する目的で提唱された理論であるため,その下には首尾一貫した論理的矛盾のない連結会計処理方法が体系化されていなければならない。しかし,比例連結概念や経済的単一体概念ではそれが達成されているように思えるが,親会社概念に限っては,多くの論者により様々なバリエーションが認められており,定義と会計処理方法が論理的に一貫しているとは言えない状況にある。そこで本稿では,現在もなお連結理論の1つの指針とされている討議資料[1991]を基に,親会社概念の定義と会計処理方法の間で論理的矛盾を生じさせている原因を検討すると同時に、そのような問題点を解決するために親会社概念の再構築を行った。結論は以下の通り。(1)親会社概念と会計処理方法の関係が様々に解釈可能であるのは,討議資料上の親会社概念の定義から導出できない支配概念が所有概念と混在し,この両視点から会計処理方法が説明されているためである。(2)この問題点を解消するには,他の連結基礎概念と整合性を図るためにも企業集団観に着目する必要がある。(3)親会社概念の企業集団観に求められる要件は,「企業集団を親会社株主のものとみること」および「親会社により企業集団の財産が支配されていること」の2点である。(4)その企業集団観から演繹的に導出される会計処理方法は,支配力基準,全部連結,そして全面時価法である。なお少数株主持分およびそれに相当する損益はそれぞれ,連結資本および連結損益から除外される。
- 1999-06-25