戦後の長期金融制度の意図と現実 (西川俊作教授退任記念号)
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概要
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第2次世界大戦後の我が国の長期金融制度を担ったのは,長期信用銀行と信託銀行の民間2業態と,これを補完する公的金融の計3業態であった。これらの各業態には短期金融機関との棲み分けを明確にするために,それぞれ金融債,貸付信託,定額貯金という独特の資金調達手段が割り振られた。これらの調達手段はいずれもキャピタルロスの危険を除去することにより,国民の大多数を占める零細投資家からの資金調達に成功した。さらに民間2業態の資金調達手段は付利方式を異にすることにより,資金運用者の多様なニーズに応える一方,景気変動のフェーズの如何に関わりなく安定的な投資資金の確保を可能にした。また公的金融の資金調達手段である定額貯金は,長期の確定利付商品であるがゆえに金利低下期に資金調達が増大し,景気下降の初期に大量の財政投融資資金を散布することによる景気の安全弁としての役割を果たした。
- 慶應義塾大学の論文
- 1998-10-25