貨幣性資産・費用性資産分類論の総合的検討 : 語用論的・狭義構文論的検討
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概要
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本論文は,現行会計の説明のための概念用具として今日もっとも優れていると思われる貨幣性資産・費用性資産分類論を取り上げ,その総合的な検討を企図している。本誌の第40巻第3号および第5号では,その意味論(計算対象論)の側面を検討したが,そこでは,計算対象を合理的に説明できなければならないという,勘定分類が充たすべき意味論上の要件をクリアーしていない,という結論が得られたのであった。本論文の企図は,総合的検討にあるので,本号では,その語用論(計算目的論)および狭義構文論(計算機構論)の側面を取り上げる。今日,勘定分類と言えば,一般に,測定規約を定めるために,会計の計算対象とのかかわりだけで論じられがちである。そして,貸借対照表・損益計算書における計算目的の遂行あるいは計算機構における諸勘定間の関係に関しては,別個の勘定分類が採用されるのが常である。筆者の言う勘定分類混在「観」が支配的なのである。しかし,会計理論を論理的に首尾一貫したひとつの全体とみるかぎり,ひとつの勘定分類によって,その領域の全体がカヴァーされなければならない。これが,筆者の依拠する統合的勘定分類観であるが,その場合には,貨幣性資産・費用性資産分類論は,その当初の企図が計算対象の把握にあったとしても,計算目的および計算機構を合理的に説明しているかどうか,ということも問われなければならないのである。まず語用論上の検討であるが,[G-W-G']に基づく貨幣性資産・費用性資産分類論は,貸借対照表の計算目的として損益計算を課しているので,第1にこの損益計算の成否を取り上げなければならない。しかし,[G-W-G']は,言うまでもなく借方項目だけであるから,どうしても貸方概念が必要になり,そうした損益計算という計算目的の視点から貸方概念が導入されることになる。したがって,第2にそうした導入の在り方の是非が問題になる。結論的には,この2点において,貨幣性資産・費用性資産分類論は,勘定分類が充たすべき,計算目的を合理的に説明すべきであるという語用論上の要件を充たしていない。次に狭義構文論上の検討であるが,ここでは,計算機構のうちもっとも重要である貸借対照表と損益計算書との関係を取り上げた。この関係については,両者の構成要素の関係,および両者の差額の関係の2点が問題になるが,貨幣性資産・費用性資産分類によれば,前者は交叉型関係,後者はカンヌキ関係になる。しかし,今日,実践的には,前者は,(例えば貸借対照表借方項目と損益計算書借方項目との同質性を意味する)直列型関係あるいは原価配分関係,そして後者は,損益計算書の利益額を貸借対照表の貸方側に移記する振替関係にある。したがって,貨幣性資産・費用性資産分類論は,勘定分類が充たすべき,計算機構を合理的に説明すべきという狭義構文論上の要件も充たしていない。かくして,貨幣性資産・費用性資産分類論は,総合的にみて,現行会計の説明に関する概念用具として妥当ではない,というのが本論文の結論である。
- 1998-02-25
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