イギリス監査制度の展開 : 精細監査の意義をめぐって
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概要
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今日のいわゆる財務諸表監査の本質を知るためには,会計と監査との関係という視点と,監査形態の展開という視点のふたつの視点から見ていくことが重要である。まず,第一の視点,すなわち,会計と監査との関係という視点から見てみると,所有と経営の分離にともない,企業会計が公会計の機能をも担うべき段階へと至ったことに即応して,会計監査も公的監査へと発展したと理解できる。公的監査においては,第三者的立場から公正不偏に行なわれる外部監査の確立が必要とされるのであるが,このような外部監査の確立が財務諸表監査の根底を流れる近代監査の精神の確立につながったのである。つぎに,第二の視点,すなわち,監査形態の展開という視点から見てみると,第一の視点とも密接に関係するが,会計監査について,いわゆる精細監査という監査形態から財務諸表監査という監査形態への展開過程を描くことができる。精細監査は,あくまでも簿記記録の存在を前提としたものであり,それら記録どうしの照合から始まっているために,受託責任監査として機能することになる。この精細監査の技術的基盤は,財務諸表監査のなかにも引き継がれている。本稿では,以上のようなふたつの視点で財務諸表監査を理解するために,とくに19世紀中葉から始まったイギリスの会計制度の展開をたどっていくこととする。
- 1997-06-25
著者
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- 茂木虎雄, 『イギリス東インド会社会計史論』, 大東文化大学経営研究所, 1994年, A5判270頁, 非売品
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