流通研究の文化的パラダイムの一試論 : 文化現象としての流通システム
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概要
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本稿では,流通研究のもう一つの視点として文化的パラダイムを新しい流通問題の設定に当てはめようと試みるものである。主な内容は,現代流通システムの多様性による「変則事例」を提示し,伝統的流通研究のパラダイムでは説明できない「文化的要因」と流通システムとの相互作用関係を分析するために,パラダイム転換で流通研究の文化的パラダイムを導入する必要性を明らかにする。それから,流通研究における文化的パラダイムの研究枠組が提示され,流通システムにみる文化的現象を組織間文化の概念によって把握してみる。そこで本稿では,まず文化構造を現わす3つの文化レベル,流通の組織間文化を具体化する5つの流通文化レベル,および流通行動を説明する6つの組織行動レベルについて明らかにする。ここにおける流通システムの組織間文化とは,「流通に関する組織間システムにおいて,参加者である組織によって共有されている有形物,価値観,信念,認知,意味,シンボルおよび行動規範」と広く定義し,検討を行う。また,流通システムの組織間文化については流通文化とよぶことにする。従って,流通システムにおける組織間文化の管理機能と,試論的に文化的分析の5つの流通文化レベルに言及し,さらにチャネル・リーダーのリーダーシップによる組織間文化の形成と変革の様相について考察する。結果として,文化的な見解によれば,流通システムは社会文化,組織文化,パーソナリティ,および組織間文化の諸概念によって編成される。これらの「文化的要因」が異なれば一国の流通システムないし流通構造の仕組も異なることが明らかにされる。
- 1997-02-25