変革期における中小企業労働問題の研究課題 (佐藤芳雄教授退任記念号)
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概要
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80年代半ば以降,規模別賃金格差は拡大の傾向をみせはじめており,それは臨時給与ではより顕著になりつつある。また,企業福祉の格差問題も指摘されている。そこで,これまでの研究動向をふりかえることによって,現代中小企業労働問題の研究課題の整理を試みた。中小企業の低賃金の根拠として指摘されたのは,「原料高・製品安」等々からくる支払能力の格差,生産性格差,生活費,労働力構成の違いや「労働力の質」の差さらには労働組合の組織率格差などであった。労働力構成や労働力の質などの議論で,主として注目されたのは製造業男子基幹労働力であった。しかし,これまでの研究はわれわれに,膨大な層として存在しつづける下請中小企業労働者や雇用形態別差別を受けつづけている臨時・日雇,季節工・期間工,パートや派遣労働者の存在を忘れてはならないことを教えている。また,ますます増大する女性労働者の位置づけをはっきりさせることを要請している。さらには,商業・サービス産業労働者の増大はホワイトカラー労働者をも視野に入れた分析を必要としている。また,新たな問題として,外国人労働者問題も浮上している。中小企業労働問題はこれら不安定雇用労働者の問題を賃金・労働条件のみならず社会保障・福祉格差を含めた総体として捉えることなくしては把握しえない時期にきている。
- 1996-02-25
著者
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