フランスにおける高齢者介護給付制度の構想 (藤澤益雄教授退任記念号)
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概要
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フランスでは,ドイツにおける先駆的実験の後を追って,要介護高齢者のための介護給付制度の立法化が試みられている。本稿は立法化に至るまでの経緯を明らかにしたのち,フランスで構想されている介護給付制度の内容やその特徴を検討し,ドイツの法制との対比も行いながら,日本における「公的介護保障」の法制化への若干の示唆を得ることを目的とするものである。(1)フランスの場合,本格的な高齢者対策をつくりあげたのは1962年のラロック報告「高齢者政策」であり,さらに今日いわれるような従来の介護関連サービスを一本化し新たな統一的制度を構想しようとしたのは,91年の二つの委員会報告(ショプラン報告とブラール報告)である。95年春の大統領選挙はこのような動向を決定的なものとした。(2)ジュペ新内閣のもとで作成された法律案「要介護高齢者のための介護給付を創設する法律案」は,全文43か条からなり,それまで公式に使われてきた「介護手当」という表現を「介護給付」に改めるなど,注目すべきいくつかの制度的特徴をもっている。たとえば1)新制度の財源につき保険的要素を払拭し,県の支出金と「老齢連帯基金」の支出金でまかなう,2)新たな介護給付を「国民的連帯の給付」として「公的サービス方式」を目ざす,3)介護給付の組立て方として「現物給付」方式に固執し,介護給付は,要介護高齢者のために行われた介護サービスに支払うこととする,などである。(3)ドイツの介護保険が保険の適用を「基礎的介護」の部分に限定するのに対して,フランスの制度は「公的サービス方式]で介護給付の一般化をはかろうとしている。これからすると日本の介護保険構想が一方で国民的連帯を旗印に制度適用の一般化を目ざしながら,他方で現実には「保険方式」に固執して制度の適用を保険料負担者に限定しようとしているところには矛盾があるようにおもわれる。
- 1996-08-25
著者
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