資本維持概念と資産評価基準の関係
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概要
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利益計算において資本維持概念は決定的な意味をもつものとして位置づけられていると言ってよいが,利益はそれのみによって決まるわけではなく,採用される資産評価基準によっても影響を受けると考えられている。この点に関して,資本維持概念は「全体利益」を決定するものであり,資産評価は「全体利益」の期間的な先取りや繰延べを行いながらその期間配分を行うものであるという見解が示されている。そこでは資本維持概念と資産評価基準とは相互に独立に期間損益の決定に参加しており,理論的にはすべての資本維持概念がすべての資産評価基準と結び付きうると主張されている。種々の資本維持概念も会計上の資本維持概念としては統一的に説明されることが必要であり,したがって,その所説は注目に値するものである。しかし,同じ主張を行いながら,論者によって採られる計算方法が一致していないことに端的に表れているように,その場合の「結び付く」ということの意味は必ずしも明らかであるとは言い難い。それゆえ,全体利益と期間利益によって説明される資本維持概念と資産評価基準の関係も,提示されている資本維持概念と資産評価基準のすべてについて全く同じに成立すると言えるのかどうか疑問である。本稿では,資本維持概念と資産評価基準とは相互に独立に期間損益の決定に参加しているという場合の独立とはいかなる意味なのか,また,すべての資本維持概念はすべての資産評価基準と結び付きうるというのはいかなるレベルにおいて言えることなのか,代表的な資本維持概念である名目資本維持概念,一般購買力資本維持概念,物的資本維持概念の三つを取り上げながら考察している。
- 1995-08-25