イギリス・プロフェショナル監査と不正の摘発 (笠井昭治教授退任記念号)
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概要
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笠井昭次教授退任記念号19世紀末にはすでにアマチュア株主監査を凌駕しつつあったプロフェショナル監査にあって,プロフェショナルの監査人は,とくに,不正の摘発を期待されていた。当時の主要な監査テキストは,不正の摘発を重要な監査目的として挙げており,これをもって,現代の論者は,不正の摘発が当時の主たる監査目的であったとし,それによって,当時のイギリス監査の性格を決定づけている。しかしながら,当時は,プロフェショナルの監査人に対する訴訟が頻繁に起こっていた時期である。その際,監査人の不正の摘発に関する責任もしばしば問題にされたが,これは,監査の発展的一段階を示すものなどでは決してなく,ひとつに,監査人が実際に行なった監査と公衆が監査人に行なっていると期待する監査とのギャップの問題として捉えられるべき問題であった。したがって,不正の摘発を当時のイギリス監査の性格を規定するものとして理解するのはミスリーディングである。その誤解を解きほぐすことができれば,また新しいイギリス・プロフェショナル監査像が生まれてくるはずである。
- 慶應義塾大学の論文