有価証券の評価について : 企業資本循環過程の観点から (笠井昭治教授退任記念号)
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概要
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笠井昭次教授退任記念号会計とは企業資本の自己増殖運動を貨幣数値に置き換えて記録計算するシステムであるととらえると,自己増殖とは何かということを検討しなければならない。まず,企業資本を源泉面と運用面の二面から眺めることの根拠は企業がもともと価値を生産する組織体であって,さまざまな資源が生産目的のために調達され,運用されると考えるのが自然であるというところにある。企業資本を二面的に眺めるということから,源泉面での増減の認識は必ず運用面での増減の認識も可能であり,反対に運用面での増減の認識は,源泉面での増減に認識が可能である。ただ,企業資本の増減と自己増殖とは必ずしも一致しない。自己増殖は企業資本の循環過程に即して考えなければならない。このとき,投下過程から回収過程への変換が自己増殖過程となる。この変換は,制度的な制約を受ける。現行の会計制度では,販売という行為を目安にこの変換は認識される。しかし,有価証券のケースでは,その他の企業資本の扱いとの整合性を考え,現実との適合性を考える必要があるものの,過度の擬制による変換の認識は受け入れられない。有価証券は外部投資循環過程にある企業資本と考えられるので,その回収は商品の販売によるものではなく,有価証券そのものを売却することによる。この売却は派遣された企業資本の撤退であると考えるのが合理的であり,その意味で撤退前も,撤退後も原価で評価するのが妥当である。仮に,売却をもって,商品の販売と同じであると考えるのであれば,有価証券の原価は売却収益(売上収益と区別される) のための価値犠牲分となり,この場合も有価証券は原価で評価するのが合理的である。もともと外部投資循環プロセスは自己増殖運動の外にある企業資本循環過程なのである。
- 慶應義塾大学の論文
著者
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