複式簿記の記録・計算対象の検討 (笠井昭治教授退任記念号)
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概要
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笠井昭次教授退任記念号複式簿記の本質を解明し,複式簿記の諸手続を統一的に説明することは,簿記学上,最大の研究課題である。しかしながら,今日でも,この課題は完全に達成されているわけではない。就中,簿記上の資産・費用の処理手続を如何に説明すべきかという問題は,一見簡単なものに見えるが,実はなかなかの難問である(笠井,1994年,343頁)。何故なら,その説明のためには,それら処理手続の根底に在る筈の統一的目的の解明,即ち,その本質解明が必要であるが,その解明の手掛かりを何に求めるか,については必ずしも見解の一致が見られないからである。この際,特に,この解明の手掛かりを,決算整理前の帳簿記録に求めるか,決算整理後の帳簿記録に求めるかという点が,研究を方向づける重要な鍵となる,と筆者は考える。本稿では,まず,複式簿記の記入手続の観察から始め,その結果に共通する記入原則を抽出する。その上で,そのような記入原則の目的は何か,更に,特に,問題を絞って,簿記上の資産・費用の本質は何か,を探ろうとする。その際,この問題についてのシェアーの理論を吟味,検討し,これを踏まえて,簿記上の資産・費用の本質を解明するためには,何を手掛かりとし,どのように探求を進めるべきかを考察する。
- 慶應義塾大学の論文