イギリス簿記書にみる資産評価の歴史 (笠井昭治教授退任記念号)
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概要
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笠井昭次教授退任記念号2001年3月期から実施された有価証券の時価評価につづき,2006年3月期からの導入が決まっている減損会計に関する問題は,取得原価主義を基盤として損益計算を行ってきた会計システムに,極めて大きな影響を投げかけている。本稿では,資産の時価評価に関する会計処理の方法がイギリスの簿記書においていつ頃登場してきたかを中心に分析した。本来,資産評価が問題になるのは,短期に回転する棚卸資産ではなく,主に固定資産に関してである。事実,固定資産に対する時価評価は,棚卸資産よりも先行し,固定資産という概念自体はまだ用いられていないが,すでに17世紀後半のモンテージの『簡単な借方と貸方』(1683) で見られ,マルコムの『簿記あるいは商人の勘定に関する論述』(1731) では,その本文中で説明されている。しかしながら,固定資産勘定が純粋の資産勘定として純化されるのは,19世紀前半の鉄道業を中心にした減価償却の会計処理が登場してきてからのことである。棚卸資産の時価評価を明確に説いた文献は,ヘイズの『現代簿記』(1731)が最も初期の一冊である。そこでは,売却可能な市場価格で評価替えされ,ハミルトンの『商業入門』(1777) では,再調達原価での評価替えが説明されている。
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