高齢者の地域移動から示される生活構造の変容と《老年危機》
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概要
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本稿の目的は,D.J.レビンソンが明らかにした,男性の「中年期」における「中年危機」と「中年の最盛期」を敷衍させ,女性をも含めたかたちで「老年期」における《老年危機》と《老年の最盛期》の存在可能性を実証することにある。<BR>そのため,まず第一に,アメリカオレゴン州の地方紙『ジ・オレゴニアン』に掲載される「死者略歴欄」に着目し,これに内容分析を施すことで「個人史の基本軸」をデータとした。第二に,レビンソンのいう「生活構造」が変化する要因を,『引っ越し』という個人の地域移動に限定して考察した。なぜなら,『引っ越し』には大幅なパーソナル・ネットワークの変容(=生活変容)がともなうからである。その上で第三に,人生の「過渡期」と『引っ越し』を重ね合わせ,「中年期」だけでなく「老年期」においても「過渡期」と「安定期」が連続的に現われ,《老年危機》と《老年の最盛期》が存在する可能性を示唆した。