ボランティア活動観に関する実証的研究
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概要
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鈴木(1989)は,日本の福祉ボランティア活動への参加者が上位階層と下位階層の人々に二分されるという調査結果を,慈善的行為と地域内相互扶助行為をそれぞれ反映するものだとして解釈した。しかし,その後のボランティア活動研究では研究者によって多様なボランティア活動観が提示されており,これらの視点を考慮した上で参加者本人の社会属性と各活動観との関連を検討することが求められている。本稿では,ボランティア活動参加者に対する質問紙調査を通じてこれらの課題を検討する。<BR>参加理由に関する回答を因子分析した結果,平岡(1986)によって「自己志向的動機」としてひとまとめにされていた動機群が,自己実現的動機群と交流志向的動機群とに分離されることがわかった。また,因子分析の結果得られた潜在因子スコアと各社会属性変数との相関分析の結果,若年・高学歴層の人々に交流志向が強い一方,自己実現的動機群は特にどの社会属性変数とも有意な関係がないことが明らかになった。また,回答者の参加活動内容と社会属性・参加動機因子との関連を調べた結果,福祉ボランティア活動領域の中でも活動内容によって動機づけに相違がみられることがわかった。これらの分析結果は,今後金子(1992)の「関係性としてのボランティア」を具体的に検討する上で意義深いものがある。
- 北海道社会学会の論文
著者
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