<総説>理学療法の歩みと進歩・発展
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概要
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医療専門職としての理学療法(士)の歴史は欧米先進国のそれとは比較にならないほど若い。その理由として国民が主権者であるという民主主義が欧米のように育っていないこと, 人間としての人権思想が欧米ほど成熟していないこと, 国民の消費者としての権利意識が低いこと, ならびに御上意識が強くて主体者意識が弱いこと等が考えられる。しかしながら, 国民医療の質を高めることが高齢社会にとって極めて重要であるし, そのためにはリハビリテーション医療が障害を対象として, 慢性疾患, 老化による身体機能の低下, 能力低下および社会的不利等を予防し, 軽減して, 寝かせきりや寝たきり老人を量的に減らすことが社会的課題となっている。そして健康寿命を延長することの社会的意義が欧米において認識され, 実証され, 実践されている。 リハビリテーション医療の医療技術として理学療法は必須な方法である。わが国の理学療法教育は欧米の外人教師の教育によって始まり, 国際的基準を目指して行われた。高い理想と理念のもとに外人教師が残していった遺産も日本人教師におき変わっていくなかで, 年月が経過するとともに教育の質の改善も厚生省の指定規則の改正の枠のなかでしか行われなかった。1990年代に入ると文部省の大学教育の大綱化に続いて看護・医療系の指定規則改正と大綱化か進み, ようやく本格的な改革が始まった。米国における医療系の教育改革は日本と同様に高齢社会を見据えて行われ, 日本と比較にならない程の規模と徹底したものであった。また理学療法の進歩・発展は米国民のニーズに応えているが, わが国の理学療法も社会的ニーズに応えることが急務である。
- 茨城県立医療大学の論文