オーヴァホフのホッブズ解釈について-「私的判断」否定論をめぐって-
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概要
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この論文で私はユルゲン・オーヴァホフのホッブズ解釈,とくに「私的判断」否定論を取り上げたいと思う。彼が示唆しているところでは,その私的判断の否定が,彼の『ホッブズの意志論』の中心的問題であるとして,彼は主としてホッブズの『法学要綱』から引用している。しかしながら,彼の解釈は人間の内面的自由を必然性の連鎖の中に閉じ込めてしまっているように思われる。つまり,彼は,ホッブズがガリレオの運動理論を自らの哲学に適用したのだと説明しようとしているのである。その結果,彼の解釈における国民のイメージは,私が「理性的人間」によって設立されるとみている主権者のイメージとはまったく異質の存在になってしまっている。ホッブズは,理性的人間として,大多数の情念的人間に対して平和な市民社会を構築するよう説得し,主権的権威の保護のもとで死の恐怖のない日常生活が送れるようにした,というのが私の解釈である。
- 2001-03-31