<学位論文要旨>森林公園における植生の把握と管理に関する環境計画学的研究
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概要
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第I章序論 現在余暇時間の増大,自然への関心の高まりなどの社会的な要請のもとに,全国各地で森林公園の整備が行われている。こうした森林公園において空間の主体となる植生についての研究は主に応用科学である造園学,林学の分野を中心に行われてきた。地域・景観レベルは,最も人為的影響を受け動的に変化し,地域環境計画にむけて生態学的な技術を必要としている。本研究では地域環境計画の一つとして人為的管理の下にある森林公園をとりあげる。従来の研究では主に公園全体あるいは特定の林床植生などの個別の研究などがなされてきたが,生態学的なスケール・レベルを統合した研究はなかった。本研究では特に植生を主体とし事例研究の計画策定時における調査からの提案というプロセスを通し,個体群レベルから景観レベルまでのアプローチにより植生調査手法・植生管理技術の検討と考察を行い,環境計画学に新たな貢献を行うことを目的とした。第II章はつかいちアルカディア創出事業における森林公園計画 本章では,新設の森林公園計画における事例研究をとりあげた。計画策定に当たり景観レベルでの事例研究として森林公園計画域全体の植生管理について検討を行った。調査方法は,従来の植物社会学的調査手法に基づき植生調査を行い,植生調査資料は類似度指数によるクラスター分析を用いて調査区の分類を行った。また,相観による植生型で区分した1/5,000の現存植生図を作成した。これらの結果から遷移段階を反映した調査区の分類および植生要素の空間配置が把握可能となった。さらに植生要素別に植生管理の必要性について検討を行った。また,個体群レベルでの事例研究として本事業において重点的に整備される「さくらの里」地区での植生管理について検討を行った。「さくらの里」地区では既存の森林からサクラの観賞を目的とした園地を整備することになり,林冠木を対象とした個体の位置および胸高直径の測定を行い,種の分布特性やサイズ分布特性から各樹種別の植生管理方針案を作成した。第III章広島県緑化センター・県立緑化植物公園における森林公園計画 本章では再整備の行われる森林公園計画における事例研究をとりあげた。1981年に開園した広島県緑化センターでは1993年に再整備計画が検討された。各目標植生のゾーニングを検討する上で対象地域の景観変化を把握するためには優占種の階層構造を把握することが重要となる。そこで短期間に植生調査を行うことを前提として植物社会学的植生調査法を簡略化し優占種簡便調査法を導入した。この調査法により優占種(アカマツ,ブナ科植物)とその他の植物についての各階層毎の被度を把握した。その結果,6つの調査班で迅速に多数の調査区を調べることができ,アカマツ高木林と常緑ブナ科植物とアカマツが混交する混交林の2種類の森林が存在することや階層構造の単純なアカマツ林が存在することがわかった。また,アカマツ高木林では後継種となりうるブナ科植物の分布が確認され,種毎に分布特性が異なることがわかった。最終的に優占種の分布・量,標高,人為的影響により成立した里山から奥山にいたる系列を考慮して,ゾーニングを決定した。その後,各ゾーンにおいて目標植生へ誘導するために,永久方形区を設置し毎木調査による森林構造の把握を行い,施業計画案を作成した。計画案に基づき施業がなされ,その評価を行うために再調査を行い施業後の森林構造の変化を把握した。本研究で導入した優占種簡便調査法は,短期間の植生調査に有効であること,および短期の森林整備には調査に工夫が必要であると結論した。第IV章森林公園における植生管理技術の検討 本章では計画事例から離れて,各種の調査手法および管理技術手法に関わる検討を行った。まず第1節において植生調査手法の検討を行った。これまでの事例研究で取り上げたように森林公園においては対象とする生態的レベルによって詳細な調査から労力のかかる調査まで様々な植生調査が行われる。そこで広島県緑化センターにおいて優占種簡便調査法から毎木調査まで4種類の調査法に基づく植生調査を同一調査区で行った。得られた優占度に対し類似度指数を算出し調査区の類似性の検討を行った。また最も利用されている植生解析手法であるDCA法を用いて調査区の序列化を行った。その結果,他の調査法と比較して優占種簡便調査法は第一軸が優占種の量により規定され,他と同様な序列の傾向を示すことがわかり,植生解析において有効であると結論した。第2節では広島県立中央森林公園において,近年地域計画などで利用されるようになった地理情報システム(GIS)の森林公園計画における利用可能性を検討した。従来の植生図の作成および植生調査を行うプロセスに対して調査資料をコンピュータ上で一元的に管理することを試みた。これまで植生調査資料は植物目録や立地環境との植生解析に利用され
- 1998-12-28