<学位論文要旨>強磁性希土類化合物 GdZn および GdCd 中の不純物の超微細磁場
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概要
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強磁性体中の原子核の位置には,周囲の電子により数百kOeから数千kOeに及ぶ超微細磁場とよばれる強い磁場がつくられている。核磁気共鳴(NMR),メスバワー効果等の方法でこの磁場を測定することにより,核の周囲の電子状態についての情報を得ることができるので,超微細磁場の研究は,磁性体の物性を調べる有力な手段の1つとなっている。強磁性遷移金属Fe, Co, Ni母体に数%溶融させた不純物の核の超微細磁場H_<hf>は,多くの研究者によって周期律表のほとんどすべての元素について測定され,原子番号によるH_<hf>の系統的変化が得られている。これらの結果は,電子構造を解明する理論的方法の発展とあいまって,超微細磁場の機構や強磁性希薄合金の母体および不純物の電子状態についての貴重な知見を与えた。もう1つの強磁性金属である希土類金属母体では,Gd中の遷移元素および希土類元素不純物のH_<hf>の系統的な研究が行われているが,他の不純物元素のH_<hf>については,Fe, Ni母体の場合ほど実験データが蓄積されていない。これは,主に大部分の不純物元素の希土類金属母体への溶解度が極めて小さいという実験上の制約によるものである。本研究は,希土類金属の代わりに希土類金属間化合物GdZnおよびGdCdを母体として用い,種々の元素の不純物についてNMRにより核位置の超微細磁場を測定し,希土類金属的な母体の場合のH_<hf>の系統的変化の特徴を調べることを目的としている。GdZnおよびGdCdは立方晶CsCl型構造をもち,キュリー点がそれぞれ269Kおよび268Kの強磁性体である。これらの化合物は,(a)NMR測定に十分な量の不純物をZn (Cd)位置,またはGd位置に含むことができる,(b)磁気異方性が小さいためNMR信号が強く,測定が容易である,(c)異方的超微細相互作用や核四重極相互作用が存在せず,実験結果の解析および解釈が容易である等の母体としての利点をもっている。GdZn,GdCdを母体とした可能な限りの元素の不純物を含む試料を作成し,NMR測定を行った結果,非遷移元素17,遷移元素12および希土類元素6の不純物の核についてH_<hf>を測定することができた。測定周波数は^<205>TINMRの2400MHzに及び,このため,新たにGHz領域用のNMR分光器を作製した。得られた結果をつぎに述べる。(1) GdZnおよびGdCd母体の超微細磁場まず,母体GdZn,GdCdの超微細磁場の特徴を調べる目的で,^<155,157>Gd, ^<67>Zn, ^<111,113>CdNMR周波数およびそれらの外部磁場依存性を測定し,それぞれの核のH_<hf>の大きさを求めるとともに,それらの符号がいずれも負(磁化と反対方向)であることを決定した。 Gd核のH_<hf>はGdZnおよびGdCd中でほぼ等しく,両化合物が類似の電子構造をもつことが示唆された。また,Gd原子の一部を非磁性La原子で置換したGd_<0.9>La_<0.1>Cd中のCdNMRを観測し,NMRスペクトルが主共鳴線の低周波数側に弱いsatellite線をもつこと,これが最隣接Gd位置に1個のLaをもつCd核のNMRであることを示した。主共鳴線とsatellite線の周波数の差から,Cd核のH_<hf>の86%が最隣接Gdスピンによって誘起されていること,GdZnおよびGdCd中のZn (Cd)位置のH_<hf>が主に局所的な環境によって支配されていることを結論した。(2)非遷移元素不純物の超微細磁場 非遷移元素(sp)不純物のH_<hf>は,GdCd中よりもGdZn中で数%程度大きい。H_<hf>の圧力依存性の測定結果から,これがZnおよびCd位置の原子胞体積の差による体積効果であることを明らかにした。また,^<115>In, ^<121>Sb および^<209>BiNMR周波数の磁場依存性から,sp不純物のH_<hf>の符号が負であることを示した。4sp,5sp不純物核のH_<hf>は,不純物原子の価電子数Z_i (Cu : Z_i=1,As : Z_i =5) の増加とともにZ_i=2で負の極大値を示した後,減少する。また6sp不純物では,H_<hf>はこれよりも少し早く減少し始める。sp不純物核のH_<hf>は,不純物のs的伝導電子 (s価電子) のスピン分極によるフェルミ接触磁場であると考えられる。不純物の自由原子状態での1個のns価電子がつくる超微細磁場H_<ns>を用いると,このスピン分極の大きさはp_e=H_<hf>/H_<ns>と表される。各sp不純物とも,Z_iが1から5まで増加するとき,p_eは-0.05から-0.02まで単調に減少することを見いだした。この解析において,H_<ns>としてFermi-Segre-Goudsmitの式に基づくCampbellの計算値と,原子核位置のスピン密度の計算に基づくWatson-Bennettの値を用いた。4spおよび5sp原子についての両者のH_<ns>値にはかなりの差があるが,しかし,得られた結果から,sp原子ではWatson-Bennettの値がより妥当であることを示唆した。Fe, Ni母体のsp不純物核のH_<hf>は,Z_iとともにZ_i=4付近
- 1994-12-28
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