<原著論文>フレーベル教育学における「家族」の教育的機能について : 外界認識の高揚と世界連関への指向性
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概要
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フレベール(Frobel,1782-1852)によれば,「家族(Familie)」は,人間関係の最も基本的な形態である.子供は,家族の人間関係の中に誕生し,そこで育つ.子供は,さまざまな体験を家族と共にする.彼は,家族と共にそこで,あらゆる認識の基礎を得る.家族の中で,やがて子供は,世界そのものの全体的な関係を理解することが出来るようになる.「家族」は,子供の認識を世界へと拡大する機能を有している.フレベールは,家族における人間関係が,子供の認識能力の初歩を育む教育にとって極めて大切な役割を有していることを洞察した.彼は,家族に存在している教育的機能を高く評価した.とりわけ彼は,母親が果たすべき教育的役割を重視した.そして,彼は母親の使命を強調したのである.フレベールは,家庭教育の充実こそが,国民教育の基礎であると考えた.彼は,ドイツにおける家庭教育の理想を,一般的な人間教育の原理に要求した.彼にとっての家庭教育は,人間教育に不可欠な段階である.その段階は,「生命合一(Lebenseinigung)」の「部分的全体(Gliedganzes)」を意味する.彼が望んだ教育の最も重大な目的は,個人の多様的な特性を全面的に統一として表現させることであった.彼の教育における理想は,それを全体としての高き社会(Gemeinschaft)へと統一的に発展させることであった.彼は,家庭での家族関係そのものに,子供を社会化し世界認識へと導く教育的な機能があることを認識した.だから彼は,家族における関係そのものが,子供にとって極めて大切であると考えたのである.彼は,フランクフルト時代の家庭教師の経験や,カイルハウ学園での,子供連との実際的な関わりを通して,そのことをはっきりと認識した.その意味から,家庭における家族の教育から,人間教育の全てが始まらねばならない.家庭は,より大きた世界連関を把握する基本的な認識の源泉である.家庭生活における乳児の教育・幼児の教育はフレベールによって最大に尊重された.また,その幼児期を育む女性の役割が彼によって,強調され,家庭の教育的意義は,彼によって絶大に評価されたのである.本論考においては,その様なフレベールの考える「家族の教育的意義」が,国民教育思想との関連において捉らえられ,彼の考える「家族の教育的機能」が,出来るだけ具体的に,彼の教育学の全体の中で考察検討される.
- 順天堂大学の論文
- 1991-03-25