<原著論文>脳卒中の排尿障害におけるUrodynamic Studyに関する考察 : タッピング法や手圧法を禁忌とする過活動性尿道の看護診断について
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概要
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1.排尿の生理は,左右の腎臓でつくられた尿が,膀胱に送られ,骨盤神経の働きで,膀胱の不随意的な収縮を抑制し,「膀胱に尿を貯え」尿道括約筋は下腹神経,陰部神経の働きで収縮して膀胱の貯尿を維持する.また,膀胱が充満すると情報が求心性に脊髄・大脳に送られ,尿道括約筋を弛緩させ,膀胱を収縮させて「膀胱から尿を排出する」脳卒中の排尿障害は,それらの神経連絡路の障害の結果生じたものである.臨床症状としては,尿失禁.頻尿.残尿.排尿困難などの臨床症状を有する.排尿障害をより客観的に診断するために,膀胱内圧測定,外肛門括約筋筋電図の同時測定(Urodynamic study)を施行し,機能の型分類を行っている.2.今回はこの検査を行った100名の脳卒中患者の検査結果を調査し,1)障害の型分類.2)型分類と臨床症状の関連.3)1)・2)の結果から看護援助を考える.3.1)膀胱機能の型分類は(1)過活動性膀胱45%(2)正常膀胱28%(3)低活動性膀胱25%であった.2)尿道機能の型分類では,(1)正常尿道43%(2)過活動性尿道21%(3)不全尿道14%の順で,これらの数字は,川平,土田らの報告とほぼ一致した.3)それぞれの型分類の組み合わせから機能障害の型は8つに分類された.4)下部尿路機能と排尿症状との関連をみると(1)低活動性膀胱では尿道機能のいかんに関わらず排尿困難をみた.(2)過活動性尿道で膀胱が正常,低活動性の場合は,いずれも排尿困難があった.またいずれも尿失禁・頻尿を認めなかった.4.Urodynamic Studyによる型分類診断が進み,過活動性尿道による排尿困難・残尿症に対しては手圧法・タッピング法による排尿誘導は逆行性感染を生じるとして禁忌といわれているが,過活動性尿道の診断は外肛門括約筋筋電図の検査を行わなければならない.しかしながら今回の調査結果から,4)の(2)の尿失禁や頻尿を伴わない排尿困難・残尿症は過活動性尿道であることが判明した.従ってこの症例に対しては手圧法やタッピング法を行ってはならないとの結論を得た.これを看護診断の1つの指標と考えたい.
- 順天堂大学の論文
- 1991-03-25