<原著>遺体に敬意を払う根拠について
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概要
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肉体や肉体の欲望を悪と見なす哲学者は古代中世には大勢いた.それは精神に対立するものとみなされ, 「自分が肉体を持っていることを恥じる」哲学者が尊敬を受けることもあった.生きている身体についてさえこのように考えるのであるから, まして遺体については何らの顧慮も払わないのは当然である.彼らにとって遺体は石ころと同じ単なる物体にすぎない.魂のない遺体が単なる物体であることにはアウグスティヌスは同意する.遺体がどのような扱いを受けようとも死者の幸福とは何の関係もないからである.しかしだからといって遺体を粗末に扱っても構わないということには同意しない.それは神が遺体が丁重に扱われることを望んでいるという箇所が聖書にあるからである.この理由をアウグスティヌスは次のように説明する.本来どのように扱われても構わないはずの遺体が丁重に扱われることを神が望んでいるという記載が聖書にあるのは, 読者にそのような身体にさえも神の配慮が及ぶことに示すことによって完全な身体を以って復活することへの希望を持たせ信仰を強めるためなのである.
- 2001-12-25