<原著>地域福祉における他職種間協慟について : 公的介護保険制度の前後
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概要
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本稿は, 市町村を基調にして展開されている地域福祉サービスについて, そのシステムに焦点をあてている.地域福祉は誰が, なぜ, いかに実践しているのかについて研究することをとおして地域福祉の思想・哲学に迫ることを目的にしている.今回の論文は, その途中での理論に基づいての質的調査である.特に公的介護保険の施行に伴う市場化や民間企業の参入などの変化に地域(本稿では物理的行政区域を考える)はどう対応しているのかについて, まず地域全体の福祉現状について調べ, その地域福祉の主体となるべき人々にスポットを当てて考察することにした.そこで, 筆者は地域の専門家組織に焦点を当てて他職種間の協働について追求することにした.なぜなら, 今後の地域の福祉向上のためには, 地域の福祉専門職者と他職種間で協働していくことが必修であるといえるからである.研究方法は兵庫県A町に出向いていき地域福祉の現状や課題について資料収集と聞き取りで調べた.「地域ケア会議」の実態については, A町の「地域ケア会議」の担当行政マン, 司会・進行役のソーシャルワーカー, 社会福祉協議会の職員に「地域ケア会議」の内容, 意識についてインタビュー調査を行った.そして地域の福祉全般の動きと地域の「ケア会議」の活動との関連を聞き取りし, 地域力学分析に基づいて考察した.その結果, 本町の「地域ケア会議」は「ケア」だけに固執するのではなく地域福祉全般について共同していこうと運営方針を打ち出して他職種間で力を合わせていく方向になっていることがわかった.「ケア会議」の構成員として営利事業者の参加や住民代表に広げて参加を促すなどして地域福祉全般に目を向けて協働していこうとしていることが伺えたのである.
- 2001-12-25