<原著>がん緩和医療のQOL評価方法 : 予後不良のがん患者への支援にさいしての全人的苦痛についての考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は, がん緩和医療において看護やその他のケアの効果を評価する目的で, 患者や家族に対するQOL(Quality of Life)評価票を作成するにあたっての, 予備的研究である.日本人に適用し得るQOL測定因子を抽出するために, 著者は東京都内にあるキリスト教系宗教法人が設置母体である総合病院内に設置された, 病院内病棟型の緩和ケア病棟で19の事例を検討し, そのうち3例を挙げて考察した.その結果, 患者が持っている複合した苦痛の内, まず優先して緩和される必要があるのは身体的苦痛であることがわかった.この身体的苦痛は他の苦痛の認知を遮断すると推測され, 身体的苦痛を緩和するとその他の苦痛を表出することができるようになることが示された.また身体症状を修飾する因子である心理的苦痛の支援は患者自身がその時の状況を受け入れ, 患者個々人の特性を発揮できるようにケアする事を目的として行うべきであることを理解した.従って, 予後不良であるという事を前提とした患者のQOL測定票は, その時々の自身の状況を患者や家族が納得しているかどうか, という視点で, 病状の進行に合わせて作成することが必要条件であると考えられる.
- 川崎医療福祉大学の論文
- 2000-06-26