ポリエチレンテレフタレート繊維の変形機構と不均一構造について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
PET非晶試料の温延伸により出現するミクロンオーダーの不均一構造の発生機構及び延伸過程における変化について実験・考察し,次の結果を得た。(1)分子鎖配向が緩和により低下しやすい延伸初期の段階で,不純物や結晶核などの周りに応力集中あるいはひずみ分布が生じ,偏光顕微鏡下でVvH光弾性パターン(不均一構造)が観察されるようになる。(2)延伸中期にはいると配向は緩和により増大するので,この不均一性は,延伸初期と中期との境界領域で強調され,剪断変形による滑り線や不均一干渉縞が明瞭になる。(3)初期の段階では,熱処理により分子鎖は無配向化し,これらの不均一構造は消失するが,中期の段階では配向結晶化を起こし,分子鎖は微結晶により拘束されているので,熱処理しても消失しない。(4)温延伸試料の基本的な高次構造は中期の初めまでに形成され,中期の延伸ではアフィン変形する。(5)以上の結果は温延伸試料の構造形成には中期初めまでの延伸条件が重要であることを示す。境界領域を通過する時間が比較的長くなる条件(延伸速度によって変化するが,毎秒1%の延伸では70℃以上での延伸,高速延伸ではさらに高温の延伸)で延伸した試料では不均一構造が発生しやすく,高配向度の試料は得られない。