<研究報告>国語辞典における語構成要素の扱いについて
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概要
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小稿は, 結合形式の語構成要素を対象として取り上げ研究を進めていくために, データベース作成の目的で行っている国語辞典を資料とする語彙調査の報告である.本調査は, 『三省堂国語辞典第4版』([三国])と『小学館新選国語辞典第7版』([新選])の比較を中心にして, さらに1990年以降に刊行または改版された小型国語辞典6種と広辞苑第4版および日本国語大辞典を加えた計10種類の国語辞典を対象とした.[三国]あるいは[新選]において, 「接辞」または「造語成分」と表示されている1525語について, これらが国語辞典において, どのように扱われているかを「見出し語の立項」と「品詞表示」の二つの観点から調査した.そして, 国語辞典において語構成要素を扱ううえで考慮すべき8項目問題点を指摘した.(1)自立用法と結合用法の記述(2)見出し語の構成単位数(単位形の決定)(3)異形態の立項(4)省略形の立項(5)同一語か別語か(多義語の扱い)(6)字音語の扱い(7)品詞表示の揺れ(8)接辞と造語成分の表示の区別 さらに, これらの分析を通して, 国語辞典の品詞表示において接辞と造語成分を区別することに対し疑問を呈し, 語構成要素としての性格を用例も含め明確に記述することのほうがより重要であることを述べた.さらに, 非自立形態の性格を分析する視点として「形態的非自立性」と「意味的非自立性」また, 「品詞決定機能」と「意味添加機能」の4つを挙げ, これらの視点に立った非自立形態の分類の例を示し, このような分類をもとにして, 個々の語構成票素の性格を分析することが可能になるという考えを述べた.またこのような分類は, 何を接辞とし何を造語成分とするかといった国語辞典における品詞表示や意味記述を再考する上での基礎作業と位置づけられるものである.
- 1995-04-01