二つの「日英語彙集」 : マクドナルドの原典とマクラウドの編集によるもの
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概要
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現在, カナダのブリティッシュ・コロンビア州, ピクトリア市の公文書館(Provincial Archives of British Columbia)に所蔵されている'Glossary of English and Japanese Words' の原稿は二種類ある.一つは原著者, Ranald MacDonald によって書かれたノートであり, もう一つはMalcolm McLeodがそれをもとに語彙をアルファベット順に並べ替えて編集したものである.マクドナルドの原典は未公開であり, その存在もほとんど知られていない.マクラウドは原典を書き直す過程において, 少なからぬ書き間違いや, 自己の知識による加筆, あるいは書き落としを行っている.本稿は, 原典と編著の原稿の一部分をフォトコピーで紹介し, また原典と編著の差異を具体的に示し, 原典に見られる語彙収集の背景やその内容について考察したことを述べるものである.ペリー来航5年前(嘉永元年, 西暦1848年)に来日した一捕鯨船員のマクドナルドが10か月の幽閉生活の中で聞き取った日本語は如何なるものであった, どのような人との交流があったか, 日本語運用能力はどの程度であったかなど, このGlossary が伝える情報は, 今日の日本語教育の立場から見ても興味をそそるものがある.ちなみに, マクドナルドは日本で初めてネイティブスピーカーとして生の英語を日本人に聞かせた人物であり, 彼の英語の弟子たちの中からは, その後の日本外交史上優れた通訳を勤めている者がでている点, 彼は日本の英語教育にも貢献していると言えるだろう.
- 1998-03-31