○○権ということばの生成と発展
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概要
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1960年代頃から今日に至るまで;"わが国では国民のあいだに権利意識が高まりつつあることを反映して, ○○権ということぱが次から次へと生まれてきている.法律用語としての権利は, 義務とともに, 社会の中における人々の色々な関係を分析するときに使う, 重要かつ中心的な道具概念である.ところが, 一般の人々が日常用語として権利しということばを用いるとき, 権利は政治的・道徳的・社会的な広がりをもった概念として, 漠然とした意味で使われることが多い.最近, ○○権ということばを旗印にした市民活動が盛んであるが,この場合,人々は権利ということばを法律上の厳密な意味で用いるのではなくて, 生活上の利益を求めさまざまな事柄に権利という語を付け加えることによって, ある主張をしているのである.しかも, 人々の権利イメージの中には私権ではなく人権が想い描かれ, 権利ということぱに神聖不可侵の観念がつきまとっていることから, ある主張をする場合, 人々は権利ということばを用いることによって, その主張内容に正当性を付与しようとしていると言える.そして今まで権利と呼ばれていなかったものを○○権と名付けることによって, 裁判所やマスコミに訴え, 立法・行政・企業の対応を迫ろうとする.本稿では, 権利ということばの使われ方を概観したのち, 例としてプライバシー権, 日照権, 環境権, 嫌煙権, 入浜権をとり挙げ, これらの新語が生まれることになった社会的背景およぴこれらの定着度を考察する.
- 1989-03-25