日本語を第一言語とする子供による形容詞の否定の習得
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概要
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言語習得の研究では,文法的な大人のことばと,非文法的な子供のことば(または第二言語学習者のことば)を対照させ,そこから習得のメカニズムを観察したり,統語論で主張されている理論を実証的に観察したりすることができる。この点で子供のことば(または第二言語学習者のことば)を観察することは非常に重要である。本研究は,日本語形容詞の否定の仕方を子供が習得する際,よく観察される間違いを指摘して,それがなぜ起こるのかを検証したものである。 Demuth (1996)およびOta (1996)は子供が発話できうる最大限のmoraの数を定めるMinimal Word Constraintを,また,Nishiyama (1997)は/ku/が独立の形態素でありそれが形容詞において否定においてのみ表層に出ると主張するVelar Deletion Ruleを提案している。本研究では,ある日本人男児の発話を2歳から3歳まで記録したMiyata (1991)のデータを分析した結果,Demuth (1996)とNishiyama (1997)の提案を否定し,子供がprosodic structure (韻律の構造)を聞き分けて統語へのマッピングに利用していると主張するFisher and Tokura (1996)を支持した。
- 北海道東海大学の論文