女性の地位の男性の支配の二者択一論 : アボリジニの新生児殺しに関して
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概要
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女性解放運動人類学者であるGillian Cowlishawは,1987年から1992年までの一連の論文で,彼女がフィールドワークをしたオーストラリアの南Arnhem Landでの新生児殺しに関して,それはその部族の女性の反乱の現れであると述べている。女性は夫やその兄弟から差別や暴力を加えられており,その仕返しとして儀礼を行う地位を得る嫡子を夫から奪うという行為をするというのである。新生児殺しは堕胎よりも仕返しとして効果があり,妊娠の9ヵ月という期間は夫とその兄弟に出産を祝う儀式を計画する期間を与えるので,その計画の頓挫は十分な失望を与えるとCowlishawは考えている。本論はColehsawのこの考えに疑問を呈し,新生児殺しを説明する時に見落とされているその部族の文化的背景を考察する。それは,西洋文化との接触の結果引き起こされた文化及び経済の基本構造の変化が男性の地位と権力を危うくし,儀礼の頻度を減少させたり廃止する傾向があることである。アボリジニ研究者は,そういう伝統的な生活様式の変化に対して代替えの方策が取られていないため,そういった社会構造の変化が儀礼を司る男性に脅威の念を与えていると述べている。また,伝統的習慣は以前の地位,権力を回復するため多少の変更が加えられ行われているが,その結果は部族間の対立を生じさせていることにもなっている。