現代日本語に於ける人称表現の意義に関する考察 : personativeの問題に関して
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概要
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言語に於ける,人称の意義を表わす総ての様々な単位とそれらの結合をPersonativeのFunctional-Semantic Field(FSF)の範囲にいれることを出発点にすると,このFSFの中心を成すのは,もともと人称の意義を持つ言語手段の総和としての人称代名詞のシステムであり,その周辺を成すのは,単独でまたは結合してPersonativeの意義を表現できる他の言語単位である。日本語は,日本の社会に歴史的に形成された社会・人的関係のヒエラルキーを反映するとともに,現代日本語の話し方(Speech Etiquette)において不可欠であると同時にPersonativeの何らかの意義への間接的指摘も含んでいる敬語の豊かなシステムを有する。この論文の課題は,人称の文法的カテゴリーを持っていない日本語に見られるPersonativeの諸表現と動詞形(または動詞形の結合)との間の相関関係(correlation)を指摘することにある。日本語においては,人称の意義は直接的(Direct)Personativeまたは間接的(Indirect)Personativeを通じて表現される。直接的Personativeは代名詞,人名並びに話題となる人の職名,職務上の地位,等級などの具体的名称付与(Concrete Nomination)であるのに対し,間接的Personativeは言語の様々な(文法的,語彙的などの)手段を通じて人称を間接的に指摘するのである。なお,間接的Personativeは,表現手段とその諸意義との間の相関関係において様々な度合を持つ。本論文では,現代日本語に於けるPersonativeの諸意義を表現できる言語単位,特に動詞形とPersonativeのそれぞれの意義との間に見られる,複雑に絡み合った相関関係の具体的例が上記の点から分析される。