古代アッティカ陶芸に関する一考察
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概要
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西洋古代絵画と聞くと,人は,恐らくポンぺイの壁画を思い起こすことであろう。西暦79年にベスビオ山の噴火によって,突然歴史の幕を閉じることになったポンぺイは,個人の屋敷を中心にローマ時代の壁画が数多く残っていることで有名である。しかし,ローマ時代の壁画は,その大部分が彫刻と同じく,古代ギリシア作品の模作である。しかも,たとえ自宅を豪華な壁画で飾る,豊かな物質生活を謳歌していたとはいえ,ポンぺイは,所詮,ローマから遠く離れた一地方都市に過ぎない。それでは,オリジナルの古代ギリシア絵画作品の研究は可能なのであろうか。古典考古学にあって,絵画史を研究する際,出来る限り原作に基づいて様式発展をたどることが求められる。そして,壁画やタブロー(板絵)がほとんど残存しない古代ギリシア絵画のオリジナル資料は,ギリシア陶芸,中でもアッティカ陶器の装飾画である。壁画やタブロー(板絵)と,スケールの点では較べるべくもないが,地中海全域に輸出されていた関係で出土数が極めて多く,装飾画の質も高い。こうしたアッティカ陶器は,今も欧米の主要博物館に所蔵されている。そして,アッティカ陶器を飾る,黒像式や赤様式絵画の様式研究によって,われわれはアルカイック時代からクラシック時代までの絵画表現の発展をたどることが可能になっている。本論では,まず,アッティカ陶器の成形,絵付けから,焼成までの手順について述べ,さらに,古代ギリシア絵画の時代的な特徴を筆者が撮影した写真を基に見ることにする。
- 宝塚造形芸術大学の論文
- 2003-03-31
著者
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