カザーク辺境とロシア国家 : 17〜18世紀のヤイーク地方を中心に
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概要
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カスピ海の北岸にひろがるステップ地域は,古来,いくたの遊牧勢力が去来,興亡した場所として知られる。本稿では,これら遊牧勢力の消長を念願におきながら,かの地の東部,ヤイーク河の流域に住んだカザークとロシア国家の関係について考察した。その大要はつぎのとおり。17世紀,カスピ海北岸のステップは,ロシア国家と軍事的な同盟を結んだモンゴル系のカルムイクの遊牧地となった。この時期,ヤイーク・カザークは,ツァーリの命に応じて遠方の戦場に出むく一方,故郷のヤイークでは,漁業と掠奪遠征を中心とする伝統的な生活を営んだ。だが,つづく18世紀,カルムイクの軍事的な価値が低下するにつれ,ロシア政府は,辺境の守備をカザークに託すようになる。それは一面では,ヤイーク・カザークの軍団領を拡大させたが,同時に軍団の「正規軍化」,カザークの自由,自治の喪失をもたらしたのである。
- 宝塚造形芸術大学の論文
- 1987-03-25