看護学生の老人に対する心理的距離
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概要
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1)本研究は, 看護学生の老人に対する心理的距離を明らかにし, 看護教育のなかの臨地実習を体験することで, 彼らの老人に対する心理的距離がどのように変化するかについて明らかにすることを目的に行った。2)対象は, 臨地実習を体験した大学看護学科の4年生61名と, 未体験の2年生49名の計110名である。看護学生の老人に対する心理的距離を測定するために, 「老人に対する心理的距離テスト」を作成した。このテストは, 設定された9つの異なる場面条件に応じて, シートの中央に描かれた老人に対して, 被験者がもっともぴったりすると感じられる場所に, 被験者自身を表すシールを貼り付けさせるものである。場面条件は, 日常の看護場面においてよく体験するストレス場面を含んだものである。分析は, 老人の絵に対する距離, 位置, 向きの3側面から行った。3)看護学生の距離のとり方は, 全般的に老人に対して近い距離に接近するものであったが, 「元気なし」「金盗られ妄想」「不機嫌」場面では, 離れた距離をとっていた。「位置」についてみると, 2年生は「正面」に位置することが多かったが, 4年生では「斜め前」や「横」に位置することが多かった。「向き」については, 2年生は常に「視野中央」で老人を捉えようとしていたが, 4年生では「視野周辺」で老人を見ることが多かった。4)看護学生の老人に対する心理的距離は, 母親の乳児に対する距離のとり方と類似して, 近い距離をとろうとするものであった。看護という職業が, 人と直接関わることを要求される職業であることが, こうした結果に繋がったものと考えられた。また, ストレス場面で老人と関わるときに, 実習体験を積んでいると余裕を持って柔軟に対応できるようになっていて, 実習体験が老人に対する心理的距離の持ち方に影響を及ぼしていると考えられた。