解離性障害の人格変換現象に関する精神病理学的考察
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概要
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通常とは明白に区別される人格状態,すなわち多重人格現象を呈した5症例を精神病理学的に検討した。症例の診断は,解離性同一性障害,解離性遁走,外傷後ストレス障害,特定不能の解離性障害であった。解離性同一性障害において,異なる人格状態は,交代人格と呼ばれる恒常的で一貫的な存在であった。各々の交代人格は,性別,固有の名前,年齢,起源,機能などの個性を持ち,全体として一個の人格システムを構成していた。患者ないし主人格と交代人格間には,健忘が認められた。一方,非解離性同一性障害において,異なる人絡状態は通常一つであり,人格と呼ぶには個性に乏しし患者の願望充足的な機能と行動を有し,人格変換の際には意識変容を伴っていた。Sullivan,H .S.の人格発達論に即して検討すると,解離性同一性障害の場合,発達早期に心的外傷によって自己の大半が,自己から解離され,それらが交代人格システムを構成しており,本来の自己は客我を欠いた無意識的な想像の主体としてのみ機能していると考えられた。一方,非解離性同一性障害の場合,発達早期に分裂機制によって分極化した自己の一部が. 「想像上の友人」として疑似人格化されていたものが,成人になっで葛藤状況の下で自己誘発性の意識変容を来したことによって,意識の統制を離れて,別の人格状態を呈したと考えられた。
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