インスリンによるセリン・スレオニンキナーゼAktの活性調節機構の検討
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概要
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非増殖型アデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入によりインスリンによるセリン・スレオニンキナーゼAktの活性調節機構における2量体型PI 3-キナーゼおよびRasの関与を検討した。FLAG epitope tagにて標識したAkt α を安定的に発現する細胞株CHO-IR/Aktを確立し,この細胞をインスリン処理し抗FLAG抗体免疫沈降分画中のAkt活性を測定したところ,インスリン依存性に活性の増強がみられ,この活性は細胞をワルトマニンで前処置することにより阻害された。CHO-IR/Aktにdominant negative型変異PI3-キナーゼをコードするアデノウイルスベクターを感染させるとウイルス濃度依存性に抗リン酸化チロシン抗体で免疫沈降されるPI3-キナーゼ活性及びAkt活性の抑制がみられた。一方,Rasの活性化因子であるS0sのdominant negative型変異分子を同様にアデノウイルスベクターを用いて導入すると,インスリン依存性のMAPキナーゼ活性は抑制されたが,Akt活性には影響がなかった。以上の結果より, Aktの活性化は2量体型PI3ーキナーゼにより制御を受けており,Rasにより活性化される情報伝達経路はこれに関与しない可能性が示唆された。
- 神戸大学の論文