インスリン依存型糖尿病の発症機構に関する研究 : 自己免疫性糖尿病の初期反応における接着分子の役割
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概要
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自己免疫性糖尿病発症過程の初期反応における接着分子の役割を解析する為に,本疾患のモデル動物であるNODマウスの幼若期に抗接着分子抗体を投与した。抗LFA-1及び抗ICAM-1抗体2週齢短期投与にて糖尿病だけでなく,膵ラ島炎もほぼ完全に阻止し得た。しかし10週齢での短期投与では糖尿病発症を阻止できなかった。一方抗CD80及び抗CD86抗体短期投与は2週齢投与あるいは10週齢投与でも糖尿病発症を促進し,この傾向は抗CD80抗体単独投与でも認められた。これらの結果は自己免疫性糖尿病の初期にLFA-1とICAM-1の両分子が重要な役割を果たしており,両分子抗体により膵β細胞抗原に対じトレランス(免疫寛容)が成立することを示唆し,以下両抗体で処置したマウス膵細胞を用い,そのメカニズムの解析を進めた。1)糖尿病発症NODマウス膵細胞を放射線照射NODマウスへ移入じ糖尿病を発症させる系に,抗体投与NODマウス膵細胞を同時移入しでも発症抑制効果を認めなかった。さらに若齢NODマウスへの移入でも自然発症糖尿病を阻止できなかった。これらの結果より抗体投与によりSuppressor activityは十分には誘導されないと考えられた。2)抗体投与NODマウス膵細胞をNOD-scidマウスへ移入しでも糖尿病を誘導できず,両抗体投与によるエフェクター細胞のクローン除去あるいは不活化も考えられた。3)しかしin vitroでは抗体投与NODマウス膵T細胞は膵ラ島及び膵ラ島抗原の一つと考えられるGAD65に増殖反応を示した。以上の結果より,NODマウス幼若期におけるLFA-1/ICAM-l pathwayの一過性の遮断が特殊な末梢トレランスの誘導を惹起し得たと考えられ, LFA-1/ICAM-1 pathwayは自己免疫性糖尿病の初期反底に不可欠なものと考えられた。
- 神戸大学の論文