ヒアルロン酸の角膜上皮創傷治療に及ぼす影響
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概要
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ヒアルロン酸(以下HA)は創傷治癒過程において重要な役割を担っていると考えられている。今回角膜創傷治癒過程におけるHAの動態をしらべる目的で,家兎角膜穿孔創におけるHAの局在をヒアルロニダーゼ消化試験法にて組織学的に検討した。その結果,家兎角膜穿孔創において創部にHAが出現し, HAが角膜創傷治癒過程において積極的な役割を果たしている可能性が示唆された。つぎにHAの角膜上皮創傷治癒に及ぼす影響を検討するために,家兎角膜上皮欠損に対しHAを点眼し,EGF (epidermal growth factor),フィプロネクチン(FN)と比較した結果,HAはEGF,FNと同様に角膜上皮再生を促進した。また,培養角膜片を用いて角膜上皮細胞増殖動態に及ぼす影響を検討した結果,通常は細胞増殖が未だ開始されない受傷後ごく早期においてHAが細胞増殖促進作用を有することが明らかとなった。以上の結果より, HAは角膜創傷治癒過程において創部に出現し,創傷治癒を促進するが,その作用機序の一つとして上皮細胞増殖促進作用を有していることが示された。HAの細胞増殖促進作用は受傷後早期の細胞増殖がまだ開始されていない時期に発現することより,細胞を増殖期に導入することによる可能性が推察された。
- 神戸大学の論文