取引費用と契約 : マーケティングにおける『取引』に関する一考察
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概要
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原材料の生産に始まり,製品の生産,販売を経て最終消費者に至る垂直的段階における各主体は取引によって関係づけられている。取引にはさまざまな形態があって,それらは制度(後に定義する)的基盤をもっている。小稿は,取引を基礎概念として,各取引主体がどのような取引形態をとり,それが何によって規定されるかを考察している。したがって,ここでは制度は,一般均衡学派で扱われているように,与件ではない。なお,取引の対象は価値物に限られず,非価値物または負の価値物(bads)であるが,ここではひとまず価値物に限定する。取引は市場で行われるか,内部組織内で行われている。前者には完全に市場の価格メカニズムに委ねられている取引と,流通系列化のように,完全に内部化されないまでも組織化されている取引とがある。小稿では取引の系列化は原材料,製品の生産,販売を経て,最終消費者に至る垂直的段階における取引主体が互いに独立を維持しながら,競争,馳け引きを通じて,協力・提携のような組織化を行っていることである。また,流通系列化(流通段階における取引の系列化)は「製造業者が自己の商品の販売について,販売業者の協力を確保し,その販売について自己の政策が実現できるよう販売業者を掌握し,組織化する一連の行為」である。ここでは流通系列化は,この定義以外に販売業者による製造業者の系列化も含まれると考える。このように,小稿では取引の系列化は上位概念であり,流通系列化は下位概念と考えることにする。契約法の類型からいえば,取引の系列化は生産,販売の垂直的段階における業務提携である。業務提携の形態には組織法的提携と契約法的提携とがある。前者は人的,資本的結合を伴なった業務提携である。その極(100%の資本参加)が垂直的統合である。後者は人的,資本的結合を伴なわず,契約に基づく業務提携である。市場をある取引主体からみて,外部組織と考え,一方に垂直的統合による内部組織と考えれば,取引の系列化は中間組織といえよう。取引の系列化はある取引主体にとっては内部でもあり,外部でもある。小稿は取引効率の観点から,なぜ取引が外部組織または中間組織または内部組織で行われるかを明らかにしょうとするものである。
- 大阪府立大学の論文
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