シャドウ・プライスによる振替価格と部門間の資源振替 (鈴木教授還暦記念号)
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概要
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本稿の目的は,LPのシャドウ・プライスに基づく振替価格が,部門間の分権的な資源振替の決定ではたす有用性を探求することにある。部門間で資源が振替えられるとき,複数の諸部門のキャパシティ(利用可能資源量)は同時に変化するし,資源受入れ諸部門のコストも同時に変化する。このような状況のもとで,資源の振替決定を「シャドウ・プライスに基づく振替価格」を使って行うには,この振替価格の値の安定性が問題の焦点になる。ところで,LPモデルやシャドウ・プライスを振替価格や分権管理に適用する研究は,多くの会計論文でなされている。たとえば,Dopuch and Drake〔1964〕,Samuels〔1965〕,Bernhard〔1968〕,Manes〔1970〕,Onsi〔1970〕,Godfrey〔1971〕,Abdel・Khalikand Lusk〔1974〕,Onsi〔1974〕,Talwar〔1974〕,Kornbluth〔1974〕,Watson and Baumler〔1975〕,およびBaily and Boe〔1976〕等である。他方,会計の分野でなされたLPの感度分析ないしパラメトリック計画法に関する研究には,Charnes and Stedry〔1966〕,Rappaport〔1967〕,Jensen〔1968〕,Wright〔1970〕,およびHartley〔1970〕などがある。本稿は,シャドウ・プライスによる振替価格の研究と,LPの感度分析の研究とを結合して,一歩進展させ,複数条件変化のもとでの振替価格の安定性に関する命題を導いたものである。シャドウ・プライスに基づく振替価格の理論的研究と,その実践的適用は会計の分野においてこそなされるべきであろう。上記のテーマの研究にあたって,本稿は,とくに部門間の人員の再配分問題に対するヒューリスティックな解決法を提示する。人員移動によって,各部門の人員キャパシティは変更されるし,受入部門では新しい追加人員に対し既存人員よりも高い(あるいは低い)賃率で支払ったり,訓練費を要したりすることがある。このような諸条件の同時変化のもとで,全社的にみて有利な人員配置を決定することが問題になっている。このような人員の効率的な再配分が重要になってきたのは,雇用の安定化要請に基づく賃金の固定化傾向があるために,固定費の有効利用をはかる必要があるからである。とくに本稿では,販売構造の変化に伴なって,企業内に人員余剰部門と不足部門が生じている場合に,余剰部門の人員を不足部門に効率的に配分する問題を研究している。
著者
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